2023.12.06

メガトレンドの先を見る: 東工大の社会動向調査プロジェクト

研究戦略部門では、本学の重点・戦略分野を中心に、産業界を含むR&D領域の全体俯瞰とその動向(トレンド)を定期的に調査しまとめています。たとえば、2022年度は、メタバースに焦点をあてた調査(学内限定)を実施しました。

調査報告書(学内限定)はこちらからご覧いただけます。

今回は、社会動向調査を担当している新田上席URAに社会動向調査プロジェクトの背景や目的について、本プロジェクトに秘められた思いを語ってもらいました。



Q1:社会動向調査プロジェクトを始めた時のきっかけや背景を教えてください。

このプロジェクトの話が持ち上がったのは2018年頃のことです。当時、大学のプロジェクトと言えば、よく出てくるキーワードは、「産学連携」や「社会実装」でした。これらのキーワードとアカデミアの研究をどう結びつけるか、そして需要に応じてそれらを組み合わせてシーズをいかに創出するかということを考えようとしていました。当時は、共同研究といっても、まだ個別に研究しているスタイルが多かった時期でした。

プロジェクトチームでは、社会が新しい方向に向けて動きだす時代に、大学と社会の新たなニーズのマッチングが起きるんじゃないか、そういうチャンスを東工大としてどう取り組んでいくか、そういう視点が必要じゃないかと考えました。そうして社会動向調査プロジェクトが始動したんです。

調査の初期段階では、大学で行われている研究の内容を把握して、たとえば、どこの分野にどういう研究者がいて、どんな研究をしているのか、いわゆるリサーチマップを作るというプロセスも踏みましたが、一方で、世界の産業界の実情を踏まえつつ研究開発が今どうなってるかを調べ、それらの両面を突合することによって、強みやニーズを発見しチャンスを掴むことができるだろうと考えました。しかし、市場のニーズが分かってから研究開発しても実質的には間に合わない、あるいは、むしろ遅いということもあります。

つまり、社会のメガトレンドをいかに早く的確に掴むかが鍵なんです。未来を見通す力があればいいのですが、実際には困難です。そこで、そこで、メガトレンドを把握するために、調査的な視点から何かできないかというのが今でもこのプロジェクトの根幹にある思いです。

Q2: 社会動向調査プロジェクトをやってみてわかったことはなんですか?

実際に調査をしていくと、世の中には情報が溢れていることに直面します。ただインターネットの情報を漁っているだけでは何も見えてきませんが、その膨大な情報の中から、たとえば、東工大の研究戦略分野を俯瞰的に見直してみる。すると、ただ情報を収集している時とは違って、より俯瞰的かつ階層的に状況を把握できるようになります。おそらく、これはどんなテーマでも共通している性質だと思います。

Q3:学内の研究者にとって、社会動向調査の情報はどのように活用できそうですか?

各研究者によって活用の仕方は異なると認識していますが、たとえば、国プロの申請をするときに、時代背景や研究の背景、社会情勢がどうなっているかを意識して、自分の研究を位置づけるケースがあるかもしれません。そういったケースにはダイレクトに使っていただけると思います。

一方で、国プロとは縁がないと思う人たちにも、社会動向を見ることの面白さを何とかして伝えたいと思っています。なぜなら、研究成果が社会においてどう貢献しうるかという観点は、研究者にとっては極めて有用だと思うからです。つまり、自身の研究成果の波及効果を想像できるか、そして語れるかどうかということです。自分の興味ある研究だけに視線を注ぐのではなくて、視野を広げて社会全体を視野にいれておく。そうすると、研究の幅が広がることにも繋がります。

Q4:この調査を行っていて、ご自身が直面した課題や、あるいはそれを克服した方法はありましたか?

テーマ設定は、調査を実施する際、毎回、課題になります。全員に広く通用するテーマというものはありません。したがって、どこかに目標を定めなくてはいけない。これまでは、東工大の重点分野、戦略分野という切り口でテーマを決めて調査をしてきています。
わたしの個人的な思いを言わせていただくと、次に社会がどう動くか、何が次のテーマになるか、国が次にどこに向かって動くか、に着目していきたいと思っています。去年はメタバースをテーマにしました。そして、今年は宇宙開発をテーマにしています。

Q5:学内の研究者たち何を伝えたいですか?

私たちが、社会動向調査を実施してすでに5年が経ちますが、学内の研究者の方々の中にはそのことすら知らない人も多いと思います。学内の多くの職員にもまだきちんと伝えられていないという自覚があります。そこは、今後の課題だと認識していますが、調査結果を見てくださいとただ言っても、自身の仕事に関係のない情報であれば、忙しい中、書類に目を通すこともないでしょう。

でも、目的意識をもって何かを考えたはじめた時に、私たちが実施した社会動向調査にたどり着いて、そこから何らかの有益な情報をくみ取ってもらえるように、情報発信の活動を進めていこうと思っています。研究分野と少しずれていたとしても、ちょっとした空き時間に読み物的にいてもいいので読んでいただいて、情報や知識の仕入れ先にしてもらえると良いと思います。

おそらく、わたしたちが進めている社会動向調査プロジェクトの切り口は、研究マネジメントやシンクタンク的な役割の重要なピースになっていくと思います。このような取り組みに対して、大学で必要な切り口や視点についてのご指摘もいただきたいと思っています。

(※このページでは生成aiを用いて作成したイラストを使用しています。)

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