EX-Fusion(エクスフュージョン)の松尾一輝代表取締役社長と科学技術創成院 ゼロカーボンエネルギー研究所の近藤正聡准教授による「EX-Fusion liquid metal協働研究拠点」設立に関する記者説明会を10月11日に大岡山キャンパスにて開催しました。
記者説明会では、拠点長を務める近藤准教授がレーザー核融合技術の魅力と重要性を紹介し、EX-Fusionと東工大の強みを活かした連携により加速される核融合商用炉の研究開発プランや展望、今後の課題などについて説明を行いました。
記者説明会には、9媒体9 名の記者が参加し、活発な質疑応答が行われました。その内容は、日本経済新聞、朝日新聞、産経新聞、日刊工業新聞、電波新聞、原子力産業新聞、マイナビニュース、ヤフーニュースなどの様々なメディアで紹介されました。
EX-Fusionの松尾一輝代表取締役社長(左)、東京工業大学の益一哉学長(中)、東京工業大学の近藤正聡准教授(右)
記者説明会の概要
EX‐Fusion Liquid Metal協働研究拠点が開発するレーザー核融合とは
レーザー核融合炉では、鋼鉄製のチャンバー内中央に射出したトリチウムと重水素の小さな燃料球に高エネルギーレーザーを照射することにより高圧のプラズマの状態を発生させて、核融合反応を起こします。核融合反応の際に高エネルギーの中性子が放出されます。EX-Fusionでは、レーザー核融合炉用のチャンバーや高エネルギーレーザー機器、燃料ターゲット技術を開発してきました。
核融合反応で発生した高エネルギー中性子を、炉心を囲むように設置したブランケット内の液体リチウム鉛合金に捕獲させ、中性子のエネルギーを熱エネルギーに変換し、リチウムに低エネルギーの中性子を捕獲させてトリチウムを増殖します。このプロセスで、私たちが社会で使用するエネルギーを手に入れます。この液体リチウム鉛ブランケットは、レーザー核融合炉のみならずトカマクなどの磁場閉じ込め方式の炉においても燃料増殖・エネルギー変換機器として期待されています。様々なタイプの核融合炉の性能や経済性を左右する重要機器として米国や欧州、中国、インドなど、世界中で設計や研究が進められています。
このたび新たに設立したEX-Fusion liquid metal協働研究拠点では、東京工業大学が開発してきた液体リチウム鉛合金を用いた高性能な核融合ブランケットシステムをEX-Fusion社のレーザー技術と組み合わせることが大きな特徴です。これにより商用炉の開発を加速し、世界の核融合開発競争に負けない技術力を醸成する事ができます。
レーザー核融合炉と液体リチウム鉛ブランケットのタッグの強み
ブランケットは、チャンバーをブランケット(毛布)のように包み込むコンポーネント(機器)であり、核融合炉において燃料の増殖とエネルギーの変換という重要な機能を担います。
レーザー核融合炉の場合、磁場閉じ込め方式の核融合炉と異なりプラズマを閉じ込めるために必要な磁場を発生させる超電導コイルを設置する必要がありません。そのため、十分な体積のブランケットを設置する事が可能で、これにより燃料増殖性能に優れた設計が可能となります。
核融合炉の模型を用いてレーザー核融合炉の構成を説明する近藤准教授
EX‐Fusion Liquid Metal協働研究拠点の目標について
EX‐Fusion Liquid Metal協働研究拠点が目指すゴールは、EX-Fusionと東工大が保有するレーザー技術と液体リチウム鉛ブランケット技術を組み合わせ、核融合エネルギーの商用炉を開発することです。近藤准教授の研究チームは、優れた熱伝導率を示す高純度のリチウム鉛合金の合成に既に成功しています。協働研究拠点では、近藤准教授の技術をもとに、商用炉に使用できる高純度の液体リチウム鉛合金(LiPb)を合成する技術を高度化すると共に、液体リチウム鉛ブランケットの概念設計を行います。レーザー技術の開発と並行して、ブランケットの技術開発を行い、それらを統合するプロセスを経て、10年以内に原理実証を達成することを目指します。さらに、協働研究拠点では、液体金属の技術を応用し、海水の淡水化や海水資源の回収等の環境系技術も開発し社会へ実装していきます。
協働研究拠点長、近藤准教授のコメント
21世紀の社会は、環境・経済・エネルギーが複雑に連動する課題を解決しなければなりません。今回設立した協働研究拠点では、レーザー核融合炉の液体リチウム鉛ブランケットの開発を推進することにより、21世紀の世界が抱える課題に対して突破口を開き、社会の持続的発展に寄与したいと考えています。核融合炉の開発競争が世界的に加速している状況ですが、URAの支援を受けることにより研究の進捗を世界に幅広く発信し、日本の技術の国際競争力を積極的にアピールしたいと思っています。
研究戦略部門、川口URAのコメント
研究戦略部門URAは、海外メディアに向けた研究成果の発信を積極的に行っています。今回の近藤准教授のケースは、先生からのご相談を受けて実施したものですが、レーザー核融合炉の液体リチウム鉛ブランケット開発への挑戦を世界中に広く発信したいと思って実施しました。海外メディアに向けての発信は一般的には科学記者向けの研究ニュースサイトの「EurekAlert!」を利用しますが、高い効果を狙ってPR Newswireを利用し米国全土のメジャーメディア(ビジネス系)向けの配信を行いました。こうした積極的な情報発信によって、情報発信後1~2週間の間に世界のメディアに集中的にとりあげてもらうことが可能になります。
今後も、東工大の様々な研究成果を世界中の方に知っていただきたいと思っています。ご自身の研究最前線をグローバルにアピールしたい先生方は、ぜひ研究戦略部門URAにコンタクトしてみてください。
海外メディア向け発信(英文プレスリリース)についてはこちら:
https://www.ori.titech.ac.jp/activity-support/pr/press/
近藤研究室:
https://kondo.zc.iir.titech.ac.jp/index.html
EX-Fusionと「EX-Fusion liquid metal 協働研究拠点」を設立 |東工大ニュース:
https://www.titech.ac.jp/news/2023/067618
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